Hosei University Manabu Sakaue's Lab.

Hosei Univ.
Keiei Gakkai
50th Aniversary


研究内容の紹介

これまでに、以下のような研究をおこなってきました。現在も継続中のもの、既に終えてしまったものが混在しています。

財務数値の分布特性に関する研究

財務情報がXBRL形式によって入手できるようになった現在、以前よりも詳細な財務情報が手軽に扱えるようになっています。このような環境を活用することによって、従来ではわからなかった財務数値の様々な分布特性がわかるようになるかもしれません。現段階において、企業の当期純利益や純資産の額と累積企業数との関係が Zipf の法則に従って分布することがわかりました。また仕訳データの最上位の数字について1桁をとった場合と2桁をとった場合のいずれにおいても、その出現頻度が Benford の法則に従うことが知られています。このような分布はベキ法則(power law)に従うもので、自然界にはしばしば観察される分布ですが、このような分布特性を持った数値を分析するためには、従来のような正規分布を前提とする分析手法が基本的に使えないため、会計研究に対する新たな手法(フラクタル分析など)の適用可能性についても調査しています。

 ※本研究は、科学研究費補助金の助成を受けています(課題番号:22530495

    研究成果の概要

     本研究課題の最終年度となる平成24年度では、昨年度より引き続いてXBRL形式の財務データの収集・蓄積を進めるとともに、財務情報の分布特性の調査をおこなった。また本年度データについても、全上場企業の財務数値についての分布の調査をおこなうとともに、同じく全上場企業の財務諸表に公開された全ての財務数値の1桁目の数字および2桁目の数字の出現頻度についても調査をおこなった。
     3年間の研究期間において、企業規模、当期純利益、売上高など特定の数値に関しては、両対数分布において概ねマイナス1の角度を持つ分布、すなわち冪乗則に従う分布を持つことが明らかになった。またこの分布は必ずしも綺麗な直線ではなく、途中でゆるやかに折れ曲がる上に凸の曲線であることも判明した。折れ曲がるという結果については当初予想された分布とは異なっているため、今後の課題として更なる調査の必要性が明らかになった。
     この他に、財務数値の最上位1桁目の数字の出現頻度と2桁目の数字の出現頻度の分布を調べた結果については、冪乗則のひとつである「ベンフォードの法則」の理論値どおりの結果が得られた。上位2桁目までの数字を取ると、10、20、30、…という切りの良い数字において頻度が突出し理論値通りの結果とはならなかったが、これは表示精度(多くの企業は百万円)の問題で数字が丸められてしまっていることに起因するものであり、丸められた数字を補正した上で出現頻度を見ると、ほぼ理論値通りの分布が得られた。データを扱う上で、表示精度の問題が結果に大きな影響を与えうることも判明した。
     なお本研究を遂行するために開発したXBRL財務データ用ツールについては、研究成果の一部として、研究代表者のWebサイト(http://mslab.i.hosei.ac.jp/)上で公開することになっている。

事象アプローチによる会計ディスクロージャーの拡張

Sorter (1969) の提唱した事象アプローチ(events approach)に基づく会計ディスクロージャーを実現するために、会計事象の概念、会計データモデルとデータベース理論、オントロジー工学、電子開示システムと XBRL をはじめとするデータ言語、等々の主として情報工学的なアプローチにより研究をおこなっています。

本研究の成果は、法政大学イノベーションマネジメント研究センター叢書として発刊されました。

  • 坂上学(2016)『事象アプローチによる会計ディスクロージャーの拡張』中央経済社。

配当課税の企業評価への影響に関する実証研究

日本企業の自己資本について資本市場は理論値よりも低く評価をおこなっているとの指摘に対し、その原因を解明するために2つの仮説を設定して実証研究をおこないました。ひとつは株主が配当を受け取る際に課税されるため配当可能利益は実質的に目減りしてしまうという、配当課税の影響を資本市場が織り込んでいるという仮説(税金仮説)です。そしてもうひとつは配当可能利益の原資となる内部留保を過剰に持つことにより、何らかのエージェンシーコストが発生しているという仮設(エージェンシー仮説)です。これらの仮説をもとに配当課税に関連する税制改正イベントをもとに実証研究をおこない、日本においては税金仮説は棄却され、エージェンシー仮説を支持する結果が得られました。

この研究成果は、香港のAPJAE誌に、大阪学院大学の奥田真也氏と大阪大学の椎葉淳氏との共同論文として掲載されることになりました。

  • Shin'ya Okuda, Manabu Sakaue, and Atsushi Shiiba, "Value Relevance of Profit Available for Dividend," Asia-Pacific Journal of Accounting & Economics, Vol. 17, 2010.

上記以外の研究業績については、以下にまとめてあります。

研究プロジェクト

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